

日本ウイグル連盟事務局
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Yaponiye Uyghur Birliki / Japan Uyghur Union/ياپونىيە ئۇيغۇر بىرلىكى
東トルキスタンの文化
東トルキスタンは古来より砂漠周縁部にオアシス都市が栄え、シルクロードの舞台として東西文化の交流の場であると同時に、独自の歴史と文化が育まれてきました。
東トルキスタンはユーラシア大陸のほぼ中心部に位置し、降雨量が少なく、昼と夜の温度差が非常に激しい、典型的な内陸性気候です。春秋は短く、夏冬が長く、夏であっても場所によっては夜にセーターが必要になります。冬は最低気温がマイナス20度にもなります。
東トルキスタンは天山山脈によって大きく2つの地域に分けられます。南側はタリム盆地で、その中央部にはタクラマカン砂漠があります。北側のジュンガル盆地は、比較的降水量が多く、緑豊かな草原地帯が形成されています。
石油、天然ガスをはじめとした鉱物資源の他、農産物、畜産物にも恵まれた天然資源の豊かな地域です。
東トルキスタンに住む人々の文化のうち、音楽と舞踊は重要な位置を占めています。音楽の様式は、各民族の生活様式によって異なり、カザフ人やキルギス人など遊牧民の音楽は、シンプルな木製の弦楽器による独奏や弾き語りが主体となっています。これに対してウイグル人などの定住農耕民は、多様な音楽様式をもっていることと、使用される民族独自の伝統楽器がとても多いことが特徴です。
ウイグル人の音楽にはムカムと呼ばれる古典音楽があり、今でもこのムカムを基にした大衆音楽が作られています。ウイグル・ムカムは伝統楽器のオーケストラによって演奏される組曲であり、2005年にユネスコの世界無形文化遺産にも登録されました。
ムカムは東トルキスタンの地域ごとに複数の伝統が存在しますが、カシュガル・ムカムが12ムカムという名でよく知られています。12の旋法から成るムカムから構成されており、全部で300近くの曲から構成されています。一つのムカムの演奏に2時間ほどかかるため、すべてを演奏すると一日かかるといわれています。12ムカムは16世紀のヤルカンド・ハン国の宮廷音楽にまで遡り、第2代スルタンの妃であるアマンニサハンと師匠のキディルハンが、12ムカムの基礎をまとめたと言われています。
ウイグル人の舞踏は、独特のステップやリズムから構成されています。舞踊様式も娯楽的な大衆舞踊や、競技性のあるもの、動物を模したものなどさまざまあります。「マシュラップ」と呼ばれる地元の祭りや娯楽的集まりのときに、民間舞踊が主に演じられています。
東トルキスタンに住むテュルク系の人々の大部分は、スンニ派のイスラム教を信仰しています。中央アジアでは隣近所のネットワークを「マハッラ」といい、東トルキスタンでも重要な生活基盤となっています。政治、経済、社会など、さまざまな日常の問題が、こうした組織によって解決されてきました。各マハッラの中心には必ずその地区のモスクがあり、日常的に礼拝が行われてきました。また、都市の中心部にある大きいモスクでは、金曜日に集団礼拝が行われています。
他国のイスラム教徒と共通する宗教的行為以外に、東トルキスタンの人々はイスラム教聖者の墓廟(マザール)への巡礼や崇拝なども行われています。
東トルキスタンで最大のモスクは、カシュガルのエイティガール・モスクで、イスラム暦846年(西暦1422年)に創建されました。平日でも3、4千人が、金曜には1万5000人~2万人が集います。
マザールで特に有名なものに、カシュガルのアパク・ホージャ・マザールがあります。このマザールは、16世紀末のイスラム教聖職者で白山党のアパク・ホージャとその家族の墓廟です。創建は1670年で、一族の棺を安置する建物は緑色のタイルが張り詰められています。乾隆帝の妃とされた一族のイパルハン(香妃)が葬られていることから、中国人からは「香妃墓」と呼ばれています。
東トルキスタンの人々の日常生活は、イスラム教の5行6信が守られており、一日5回の祈りのほか、イスラム教のニ大祭も行われています。イスラム暦の断食月であるラマダーン(9月)明けの10月1日には、断食明けを祝ってローズ祭が行われます。それから70日後の12月10日には、コーランに由来した犠牲祭(クルバン祭)が行われます。これら宗教的な祭り以外に、テュルク系民族・ペルシャ系民族共通の「お正月」に当たるお祝いとして、春分の日にノウルズ祭も行われています。
東トルキスタンのテュルク系民族とイスラム教の融合であるテュルク・イスラーム文化は、カラ・ハン朝のときから始まります。テュルク・イスラーム文化の先駆けであり、また最も偉大な作品であるのが、ユスフ・ハス・ハジブの「クタドゥグ・ビリク(幸福になるための知恵)」と、マフムード・カシュガリーの「ディーワーン・ルガート・アッテュルク(テュルク語大辞典)」です。
ユスフ・ハス・ハジブはバラサグンの名門の家に生まれ、後に文化の中心地であったカシュガルに移り住みました。若い時に受けた高い教育と豊かな知識を得て、1070年に書き上げた長詩が「クタドゥグ・ビリク」です。この詩を当時の王に献呈し、「ハス・ハジブ(信用できる侍従大臣)」の称号を賜りました。この長詩は君主のあるべき姿を説いた教訓書であり、主要な登場人物は正義・幸福・知恵・終末の徳目を擬人化したもので、それら登場人物の独白や討論の形で、政治や経済、軍事、法律などの社会問題について述べられています。芸術的な価値も高く、テュルク語の文学史上だけでなく、カラ・ハン朝研究の重要資料でもあります。
マフムード・カシュガリーはカシュガル近郊で生まれ、中央アジアの各地を流浪したのちに、セルジューク朝の首都バグダートにおいて「ディーワーン・ルガート・アッテュルク」を書き上げ、バグダートのカリフに献呈しました。この辞典は8編からなり、項目数は7500を数えます。単語の各項目ではアラビア語による説明のほかに、民謡や格言なども付け加えられています。テュルク諸語だけでなく、歴史や文学、人種、民俗、社会なども載せられており、この辞典なしにテュルク学を研究することはありえないと言われています。
ウイグル人は日に三度の食事をとりますが、ナンとお茶程度で済ませる「チャイ」と、料理を作って食べる「タマック」を区別しています。家の中で偉い順にダスティハンと呼ばれる食布を囲んで座り、食事をとります。
ウイグル料理は一般的に小麦や米を主食とし、肉類や乳製品、野菜などが好まれます。料理の種類はとても多く、ナンやポロ(ピラフ)、ラグマンなどの麺類、まんじゅう、焼肉などがあります。果物も季節によって、メロン、スイカ、ブドウ、リンゴ、ナシ、アンズ、ザクロなどが食べられます。肉は主に羊や牛、鶏やアヒルなどが食べられます。ブタや肉食動物、猛禽類、死んだ動物、血が十分抜かれていない肉などは、宗教的にタブーとされています。
東トルキスタンの人々に伝統的に飲まれてきたのが、チャイと呼ばれる茶で、よくミルク茶にして飲まれています。客が来たときには、まずチャイとナンが出されます。ナンは日常の主食であり、2千年以上の歴史があります。小麦粉を主な材料とし、ゴマ、タマネギ、卵、油、バター、ミルク、香辛料などが加えられます。材料や製法、形状などさまざまな種類のナンがあります。
また小麦粉を使った麺類もよく食べられています。なかでも、手で細く伸ばした麺に、野菜や羊肉などを炒めた具をかけた、ラグマンはもっとも好まれて食べられる主食の一つです。ラグマンは中央アジア全域で食べられていますが、西トルキスタンのものに比べて東トルキスタンのラグマンは、汁気が少なく麺にこしがあるという特徴があります。
カワプ(シシカバブ)はウイグル人の伝統的な羊の串焼きで、軽食としての人気が高い料理です。羊の肉と脂身を小さく切って下ごしらえをした後に鉄の串に刺し、塩と香辛料を少々振りかけて炭火で焼いたものです。